マネキン花嫁と呼ばれていた彼女が、ようやく約束の場所にやって来た。気配りの足りない男に玄関先で振り向かれると、蝕まれた顔は放心状態だった。女は貧しい家に育ち、自分を嫁に出した方のために、何としても家計を助けたかった。そのため、ハロウィンの仮装のバイトを見つけ、これまで数日間貯めた手持ちの小銭で、最安値の格安ドレスを取った。 「かわいいね！」
男の褒め言葉に微笑を浮かべた女は、思わず素っ赤な腕を露出してしまったが、それを気にしないでくれた。何て風変わりな日だろうか、と女は思った。これまでの人生の中で、こんなに特別な瞬間があっただろうか。思わず、ぶつぶつと呟いてしまう。
男は、ようやく目的地に着くと、少しあっけない望む場所に到着した。しかし、彼女にとっては、これまでの楽しみが良い思い出に変わった。今夜にも、次に待つ恋人に話をすると何と言ってくれるだろうかと楽しみになった女は、少しだけうっとりした顔で、男に向かって笑顔を浮かべた。
■この小説のちくわ様自己採点 感動的：5 笑える：0 悲しい：0 夢がある：8 怖さ：0. 合計点：13
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