「サトノグランツ」という競走馬の話を聞きましたか?あの馬が出る競走場はどこも大混雑で、人気の高さは異常です。それに、どのレースでも必ずと言っていいほど上位に入り、大金持ちになったという噂もあります。そんなサトノグランツの話を、ある日の電車の中で聞いた主人公・梅田拓海(うめだ たくみ)は、何気なく気になり始めました。
しかし、拓海が競馬に興味を抱いたのは、ちょうどその日から数日後に、ある女性・木島環(きじま たまき)と知り合ったからでした。環とは、拓海と同じ会社で働く新人で、彼女が競馬を趣味にしていることを知り、競馬についての話をしばしばするようになっていたのです。
そして、ある日、環から「競馬に詳しい人に相談したいことがあるんだけど、拓海さん、興味ある?」と声をかけられます。そこで環が話したのは、実は彼女が持っている貯金を、競馬で増やしたいということ。もちろん環は、自分で勉強をして予想するつもりでしたが、彼女が施設入所中の母親からもらった遺品の中に、『名馬想眞』という本が入っていて、それを手がかりにしたいと思っていたのです。
「名馬想眞」は、競馬関係者でも知らない人はいないであろう、伝説の一冊。しかも、現物を見た人はほぼ皆無で、その存在自体が都市伝説になっていました。しかし、環は母親からの遺言で、この本を読んで競馬に勝ち、夢だった海外旅行に行くという目的を持ち、少しでも予想に役立てたいと思っていました。
結局、環は拓海に相談して、一緒に名馬想眞を探すことに。しかし、あまりにも有名すぎて手に入らないため、二人は交換することに決め、拓海は自分が持っている、ちょっと変わった物語を提供することに。すると、環はその物語の面白さに夢中になり、競馬について勉強することも忘れてしまうほどでした。
そして、ある日、環と拓海は競馬場で、サトノグランツが現れるレースを見ることになります。環は拓海の紹介で知り合った、競馬関係者から予想を聞くことができ、拓海は自分の物語の情景を思い浮かべながら、レースを眺めていました。
「サトノグランツ、頑張れ!」と思いを込めた拓海の前に、いつの間にかしっかりと環が掴んでいた手が、優しく拳を握られ、彼女から「ありがとう、拓海さん。物語、すごく面白かったよ」という言葉がかけられました。
競馬の結果は、今回もサトノグランツが優勝し、大喜びになる環に対し、拓海はややシュンとした表情で、物語の情景を思い出しながら微笑んでいたのでした。
■この小説のちくわ様自己採点 感動的:7 笑える:4 悲しい:3 夢がある:9 怖さ:0. 合計点:23
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