「夜な夜な模型世界を繰り広げる変わり者主人との出会いに、私の心は揺れ動いた」

「主人はどんな思いでいるのかな?」と、私たちはよく思うものだ。私、彩菜(あやな)も同じで、日々、愛犬カチューシャとの散歩中にそんなことを思うことがある。でも、今回の主人はとびっきりの変わり者だった。

彼女の名前はマスミ。彼女は、夜な夜な鉄道模型を作ることが趣味で、そればかりか模型の中に人形を入れて人生を再現するのだ。あの有名な雪国の小説も、彼女の手にかかれば驚くほど緻密に再現される。

彼女の作品は、常に完璧で細かいところまでこだわりが感じられるものだった。だが、彼女の作品にはまだ1つだけ未完成のものがあった。それは、坂本九さんを再現したものだった。

「完成させたい。でも、思うようにできない」と、彼女は溜息をつく。そんな彼女を見ると、私も彼女の作品に慣れ親しんできた分、気になるものがあった。

「主人?坂本九さんって、本当に大好きだったんですか?」と聞くと、彼女は思わぬ反応を示した。

「違いますよ、坂本九さんなんてぜんぜん興味ありません。ただ、あの曲が好きで、人形を作ることに興味があり、何か新しいものを作ってみたかった。ただそれだけですよ」

私は、彼女の目が悪いとは思わなかったが、それが原因であればと少し安心した。そして、私も今度はひとつ提案をした。

「その人形、もう少しリアルにするんじゃないですか?もしかしたら完成するかもしれませんよ」

彼女はあっさりと私の提案を受け入れ、素手で大胆に彫り込んでいく。すると、3日後に彼女が見せてくれたのは、まるで本物の坂本九さんのような人形だった。

「これは凄い……!」

彼女は私に笑顔を向けて、ようやく完成に至った思いはせる人形を見つめた。そんな彼女の作品に私も自然と想いを込めていた。

「これからも、もっと素晴らしい作品を作っていってくださいね」

彼女は、私に微笑みかけて、次の誰かの人生を模型にすることを考えて、コロナに負けない彼女の人形作品に夢を託そうとしていた。

■この小説のちくわ様自己採点
感動的:7
笑える:1
悲しい:2
夢がある:8
怖さ:0
合計点:18

「主人はどんな思いでいるのかな?」 柏木由紀子、「SUKIYAKI」のビルボード1位から60年で坂本九さんに思いはせる|ねとらぼ
https://news.yahoo.co.jp/articles/9ea0f3e1e6c8cc55467d918b191318ac15b20483

コメント

タイトルとURLをコピーしました