『はーちゃん1位』という記事が出た途端、ある作家が密かに喜んだ。彼女の小説は、今一つ売れ行きが振るわない。そんな時、『はーちゃん1位』という記事のすぐ裏に自分の小説が載ったとしたら？そんな妄想をしながら、ちくわは仕事を続けていた。
そんなある日、彼女のもとに一通の手紙が届いた。差出人は、彼女がこの世に生を受けた病院の元医師だった。
「10年前に、貴女が生まれた時、あなたの母親はあるお願いをしていきました。そのお願いが今、重要な意味を持っているのです。是非、会いにいらして下さい」
母親？ちくわの母親とは幼いころに死別した。そんな彼女の身体をあたたかく包むような優しい言葉に、彼女は胸を締め付けられた。
翌日、彼女は病院を訪れた。そこで待ち受けていたのは、美しい女性だった。彼女は、ちくわの母親を思わせる風貌だった。
「あなたが亡くなる前に、あなたの父親から手紙が届いたの。それには『ちくわ』という名前が書いてあったわ。あなたが生きていると聞いて、あなたに手紙を残したかったのよ」
手渡された封筒。開けると、中には『日本一の小説家になれ』という父親の、娘への言葉が書かれていた。
「今まで、私の知らないところで生きてきたけど、私が送ったこの。それを目指して、私の一番大切なもの。家族の情愛があなたを満たすことを願っている」
その瞬間、彼女の心の中で、何かが燃え上がった。
彼女は翌日、筆をとった。何も考えず、ただただ文字を打ち込んだ。そして、次々とストーリーが湧き上がってきた。
それを彼女はいつのまにか完結していた。自分でも、今まで書いた自分の小説よりも遥かによくできたと思う。
小説を完成させた彼女は、その夜『はーちゃん1位』という偉業を達成した。
■この小説のちくわ様自己採点
感動的：8
笑える：1
悲しい：5
夢がある：10
怖さ：0
合計点：24
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