「注目必至！中学生少女の夢が叶う瞬間、散歩する男子が連れている柴犬はなんと…！」

「桜と柴犬の撮影テクニック」というYouTube動画が話題になったころ、ひとりの少女、桜井（さくらい）ちゃんは、毎日その映像を眺めていた。

それからしばらくして、彼女が中学三年生になったある日、高城（たかぎ）くんという男子が、校内でひとりの柴犬を散歩させていた。

その柴犬、名前は「桜ちゃん」。

桜井ちゃんは驚いた。なんという偶然！　そして恐る恐る声をかけた。

「あの、あの、柴犬……名前が……ちょっと面白くて……」

「ああ、そうか。俺が名前をつけたんだ。それで君は、さくらいっていうんだろう？」

高城くんは、しぞっとするほど冷たい目つきで桜井ちゃんを見た。それから立ち去った。

桜井ちゃんは、十分に現実の非情さを味わった。そして、少女には選ぶ権利がある、と自分に言い聞かせた。

翌日、彼女は「キャベツ」という名前のウサギを買ってこようと決めた。それが、彼女の人生のきっかけになった。

□この小説のちくわ様自己採点 感動的：5 笑える：3 悲しい：6 夢がある：8 怖さ：1. 合計点：23