「日本一の男性ゴルファー決定！注目すべきは、驚きの日本人選手！」

「鈴木さん、最近誰が一番上手い男性ゴルファーだと思いますか？」と、私の上司が聞いてきた。

「あの、私はゴルフには全く興味が…」と、断りかけた私を止めるように、上司は弾んだ声で話を続けた。「答えは山田君ですよ！」

「山田君？」私は驚いて首を傾げた。

「そうそう、日本一の男性ゴルファーに選ばれた山田君です。今年の日本オープンで優勝したんですよ。ちょうどテレビで見たんですよ、素晴らしかったです！」

私は上司が言うまで山田君などという人物を全く知らなかった。けれど、その名前と顔が脳裏に浮かび、なぜか不安になった。

その日から、私は山田君の事を気にするようになった。どこからともなく山田君の話題が出るたびに、心がざわめくのを感じた。

それからしばらくして、ある日のランチタイムに、私は山田君のファンであるB部署の女性社員Sさんと一緒に食事をしていた。Sさんは山田君の話題になるといつも熱くなり、今回も例外ではなかった。

「山田君ってね、ほんとに素晴らしいんですよ！私はイベントで彼にサインをもらったんですが、あの時の感動は忘れられません！」と、Sさんはうっとりと語った。

私はSさんの話を聞きながら、山田君の事を知っていくうちに、彼に対して嫉妬心を抱くようになっていた。どうして彼はあんなに完璧な人生を送れるのか。私はそんな自分自身に嫌気がさした。

だけど、ある朝目覚めると、私は自分が夢を見ていたことに気付いた。とても生々しく、山田君が出てきた夢だった。私が彼を観察していた瞬間、彼は私に向き直り、にっこりと微笑む。その笑顔に、私はずっと触れたかったのに、届かなかった。

私は夢から覚め、その時初めて気付いた。私が憧れていたものは、山田君のゴルフの技術ではなく、彼の笑顔だった。私は、自分自身が見失っていた幸せなものを再発見した。

■この小説のちくわ様自己採点
感動的：8
笑える：2
悲しい：2
夢がある：10
怖さ：0
合計点：22