春風が心地よく吹くその日、あの伝説のバンド「極楽トンボ」のツアー初日がやってきた。主人公のアキラは緊張と期待で胸を膨らませながら、親友のヒロとともに東京ドームに足を運んでいた。今年で40周年を迎える「極楽トンボ」は、その昔、若者たちにとって革命とも言えるような曲を生み出した音楽のパイオニアだ。会場に到着したアキラとヒロは、興奮気味に新作のTシャツを手に入れ、コンサートを待ちわびるファンたちとトークを楽しみながら待ち時間を過ごしていた。そんな中、会場に響くアナウンスが二人に耳に届く。「ただいまよりスペシャルゲストとして、若手アーティストの冴夜マリアさんをお迎えして、極楽トンボのステージに先立ってお届けいたします！」
冴夜マリアとは、近頃アキラが密かに惚れこんでいる、まさに天使のようなルックスと天性の歌声で魅了する新進気鋭のアーティストだ。
アキラはその場で目を丸くする。まさか、こんな機会があるなんて夢にも思っていなかった。ヒロに聞くと、彼も相当驚いていたが、「極楽トンボ」ほどの知名度があるバンドが、若手を売り出すためにスペシャルゲストを起用することも珍しくないらしい。
いよいよ、冴夜マリアがステージに姿を現すと、会場の空気が一変する。その透き通るような歌声がアキラの心に響き、一瞬で現実感を失ってしまうかのようだった。
しかし、彼女が歌い終えステージを退くと、魔法が解けただろうか。会場の明かりが落ち、楽しみにしていた「極楽トンボ」のメンバーが姿を現し始める。しかし、アキラの目に映るのは冴夜マリアの美しい笑顔だけだった。
結局、アキラには「極楽トンボ」の演奏は全く印象に残らず、そのまま夢心地のままコンサート会場を後にすることとなった。そして彼は翌朝、思いを寄せた冴夜マリアのライブツアー初日のチケットを手にするのだった。
■この小説のちくわ様自己採点 感動的：6 笑える：3 悲しい：2 夢がある：4 怖さ：0. 合計点：15
ツアー初日|twitterトレンド
コメント