ある雨の土曜日、市井の奇才・太郎は、非日常な発見をと希少な「ドロウ文庫」を手に入れた。その本には、「セメント色の旅」、「踊る水槽の夜」といった風変わりな固有名詞が連なる、想像力に富んだ物語が詰まっていた。太郎は、雨に濡れる街はどこか懐かしく、それと同時に不安が滲む気配に魅かれる。彼にとって、土曜日は冒険心に満ちた曜日である。人通りの少ない西角町の古本屋で見つけたこの本は、彼に意外なスリルを提供してくれることになる。
詩的な響きを持つ「セメント色の旅」は、主人公・綾乃が恋人・隼人と秘密の旅をする物語。しかし、旅を進める中で出くわすさまざまなハプニングによって運命は狂わされ、最後には彼らは別の道を歩むことに。一方、「踊る水槽の夜」では、巨大水槽の中で躍る美しい水泡が謎の連続殺人事件と重なっていく。
どんな果てしない物語も、最後には伏線が回収され、感動的な結末を迎える。太郎は、「ドロウ文庫」の世界にどっぷりと浸り、曇り空の土曜日を過ごす。そして、閉じた表紙から湧き出る大粒の雨粒は、新たな物語への期待を彼の胸に滲ませる。
その夜、太郎は綾乃や隼人たちの命運に思いをはせながら、「ドロウ文庫」をぎゅっと抱きしめ、風変わりな固有名詞がまるで流れ星のように夜空を舞い踊り、時代を超えていく夢を見る。
■この小説のちくわ様自己採点 感動的：8 笑える：2 悲しい：6 夢がある：10 怖さ：1. 合計点：27
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