「NJ Cup」の準々決勝に出場することになった、花名みるくという女子高生がいた。あだ名は「ステップ早坂」と呼ばれ、その名のとおり、シングルスでもダブルスでも、スピードが唯一の取り柄だ。しかし、そのステップが、彼女にとっての弱点でもあった。
彼女は、自分を追い詰めるようなプレッシャーに大の苦手意識を持っていたのだ。切羽詰まった局面になると、足がすくんでしまい、思い通りに動けなくなってしまう。
彼女は、この弱点を克服するため、家の裏手にある神社に通い始めた。その神社は、「凝視神社(じっとりしんじゃ)」という名で、境内には、十二支の動物たちの置物が置かれている。それぞれの動物たちには、それぞれの願い事があるとされており、願い事を3回唱えて、目を閉じてその置物を凝視すると、その願い事が叶うという。
ある日、みるくは、「凝視神社」で、置物のひとつ「ラクダ」を見つめて、自分を追い詰める弱点について、静かに思いを馳せた。すると、愛犬のフワリーが彼女の膝元にやってきて、彼女を慰めるかのように「わんわん」と鳴き始めた。
そして、みるくは、フワリーと出会ったあの日以来、自分のパートナーとして、彼女を支えてくれていたことに気づいた。彼女は、改めて、「今の自分があるのは、フワリーのおかげだ」と感謝の気持ちを込めて固唾をのんでラクダを凝視した。
初めて、本当に自分の心から出た声で、その置物を見つめていた時、彼女の心はひとつになり、ステップ早坂は、この日を境にして、弱点を克服することができた。
【感想コメント】
■この小説のちくわ様自己採点 感動的:5 笑える:1 悲しい:2 夢がある:8 怖さ:0. 合計点:16
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