「スーリール ダンジュ 本店」が奈良県で2位に選ばれたことにちょっとムッとした私、ちくわだった。私が出会った1位のケーキ屋さんは、「なまり」という名前の小さなお店だった。その日私は、仕事帰りに偶然通りがかったのだ。入り口は非常に地味で、雑誌に載るようなインテリアという感じでは全くなく、数人も入ると小さく感じる店内には、不思議な形をしたケーキたちが並んでいた。
「あのう…このケーキは何ですか?」私が指差したのは、鎌のように湾曲した形をしたふわふわなケーキだった。
「ああ、あれは『月下美人』って言いますよ。口どけがなんとも言えないんですよね。」
係のおじさんがそう説明しながらちょっとだけ微笑んだのが印象的だった。
私はその日色々なケーキを試食し、夜遅くまで店にいた。そして、帰ろうと手はドアに伸ばしたが、何気なく覗いた丸い窓に、もう一つの扉が見えた。
実は、なまりには裏口があるそうだ。係のおじさんに聞くと、その先には別のお店があるという。私は自分の好奇心に囚われ、その先の扉を開けることにした。
扉を開けた先に現れたのは、何と畳一畳ほどの広さしかない小さな空間だった。中央には普通の卓になっているテーブルと、少し高級そうな椅子が2つ、壁には縁側風の屋根や和紙が張られ、一つの小さな庭が続いている。その中央には、落ち着いた声色の美女が、煎茶を点てていた。
「いらっしゃいませ。どうぞおかけください。」
美女に促され、私は椅子に腰掛け、煎茶を頂いた。この空間は、殆ど別世界のようだった。食べ物が心の訴えを言葉にすることが出来る空間。
私はこの狭い空間から出ると、係のおじさんに会った。
「あの中に入るには、完全予約制になるんですよ。しかも、ランダムで選ばれた人だけが中に行けるそうです。」
そんな興味深い情報を聞かされ、私は再びなまりに通うようになった。そして、何度も何度も挑戦することになる予約に、ついに当選。私はお姉さまと再度その空間に案内された。すると、係のおじさんが教えてくれなかった「なまり」の大ヒットメニューがそこに現れ、私たちは驚愕した。
それは、「雪しずく」という、本屋の想い出を思い起こさせる美しく繊細なケーキだった。私たちはその美しさに圧倒された。その場を去るとき、美女のお姉さまが私に差し出した手紙があった。
「鍵を持って戻って来たら、あなた自身が作りたいケーキを作れる空間があります。あなたのユニークさが、それを作り出すと思います。」
それ以来、私は、毎日なまりに通い、時間があるときは裏口から入り、よく作るようになった。彼女の言葉通り、それぞれの当たり前の日常をユニークにすることができるケーキを作り続けているのだ。
■この小説のちくわ様自己採点 感動的:8 笑える:2 悲しい:1 夢がある:10 怖さ:0. 合計点:21
「あのう…このケーキは何ですか?」私が指差したのは、鎌のように湾曲した形をしたふわふわなケーキだった。
「ああ、あれは『月下美人』って言いますよ。口どけがなんとも言えないんですよね。」
係のおじさんがそう説明しながらちょっとだけ微笑んだのが印象的だった。
私はその日色々なケーキを試食し、夜遅くまで店にいた。そして、帰ろうと手はドアに伸ばしたが、何気なく覗いた丸い窓に、もう一つの扉が見えた。
実は、なまりには裏口があるそうだ。係のおじさんに聞くと、その先には別のお店があるという。私は自分の好奇心に囚われ、その先の扉を開けることにした。
扉を開けた先に現れたのは、何と畳一畳ほどの広さしかない小さな空間だった。中央には普通の卓になっているテーブルと、少し高級そうな椅子が2つ、壁には縁側風の屋根や和紙が張られ、一つの小さな庭が続いている。その中央には、落ち着いた声色の美女が、煎茶を点てていた。
「いらっしゃいませ。どうぞおかけください。」
美女に促され、私は椅子に腰掛け、煎茶を頂いた。この空間は、殆ど別世界のようだった。食べ物が心の訴えを言葉にすることが出来る空間。
私はこの狭い空間から出ると、係のおじさんに会った。
「あの中に入るには、完全予約制になるんですよ。しかも、ランダムで選ばれた人だけが中に行けるそうです。」
そんな興味深い情報を聞かされ、私は再びなまりに通うようになった。そして、何度も何度も挑戦することになる予約に、ついに当選。私はお姉さまと再度その空間に案内された。すると、係のおじさんが教えてくれなかった「なまり」の大ヒットメニューがそこに現れ、私たちは驚愕した。
それは、「雪しずく」という、本屋の想い出を思い起こさせる美しく繊細なケーキだった。私たちはその美しさに圧倒された。その場を去るとき、美女のお姉さまが私に差し出した手紙があった。
「鍵を持って戻って来たら、あなた自身が作りたいケーキを作れる空間があります。あなたのユニークさが、それを作り出すと思います。」
それ以来、私は、毎日なまりに通い、時間があるときは裏口から入り、よく作るようになった。彼女の言葉通り、それぞれの当たり前の日常をユニークにすることができるケーキを作り続けているのだ。
■この小説のちくわ様自己採点 感動的:8 笑える:2 悲しい:1 夢がある:10 怖さ:0. 合計点:21
「奈良県で人気のケーキ店」ランキング! 2位は「スーリール ダンジュ 本店」、1位は?【2023年6月版】|ねとらぼ
https://news.yahoo.co.jp/articles/02116e48e0f064766aba294ce8da3fe9629adfab
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