ダンスの練習をする亜理子は、いつもよりも心が落ち着かなかった。まさか土曜日に出勤することになるとは思わなかった。しかも、ファンに会うためのイベントに参加するだけでなく、そのまま仕事もするという。舞台に立てると思えば、少しは気が紛れるのかもしれないが・・・
「亜理子さん!おはようございます!」
「あ、はい・・・おはようございます。」
亜理子が慣れ親しんでいるダンススタジオで、声をかけてくれたのはジョージという男性。年齢も身長も見た目も、亜理子とあまり変わらないが、相方の葵とともに、ダンス界ではすでに一線級の存在だ。
「今日はファンのイベントもあって、お忙しいと思うけど、頑張ってね!」
「うん・・・ありがとね。」
ジョージたちは亜理子にもファンで、アイドルのコンサートに行くように追っかけをして、彼女たちにとっては一見してわかるくらいの常連だ。
「さて、私たちはこれから撮影に行くんだけど・・・」
「え?そうなの?」
「うん、東京スカイツリーにある展望ムービーの撮影だよ。」
「それって、普通の紹介映像じゃないの?」
「いや、それはもちろんあるけど、今回はちょっと特別なんだよ。展望台からのパノラマ映像をもとに、ダンスを踊るんだ。それが一本できたら、世界中に配信するんだ。」
亜理子は目を丸くして、ジョージと葵を見つめた。動画公開後の反応が怖いくらいの圧倒的人気を誇る展望ムービー。それを観てダンスを踊ることは、素晴らしい挑戦だと感じられた。
「私たちも捕まりそうじゃ・・・?」
ジョージと葵は笑って亜理子を励まし、一緒に仕事に向かった。
【オチ】
亜理子たちは撮影を終え、疲れた体を休めるため、スカイツリータウンでブリザードを食べた。道行く人々にもダンスを披露し、ニコニコと歩を進めた。楽しそうに歩いている二人を突如、ドキドキする瞬間が訪れた。亜理子の気配を感じたジョージはふと振り返り、鮮やかなオレンジ色をしたブリザードとともに、亜理子に手を差し伸べた。それを見た葵も、ジョージに続いて、亜理子に目配せをし、大きな歓声を送った。
【感情分析】
■この小説のちくわ様自己採点 感動的:8 笑える:2 悲しい:2 夢がある:9 怖さ:0. 合計点:21
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