「チャリンコの鳴る店で味わえる、ちくわ串の絶品さに感動！」

「いっらしゃいませー！」チャリンコのベルの音が軒先に響く。おなじみの鼻高々なウサギが店内で注文を取っている。日本郎という名の主人公はゆで太郎のメニューをひとつ注文する。

「お待たせいたしました！ ちくわ串いかがでしょうか？」ウサギが大きな盆を届けてくれた。

日本郎が握り締めた箸でちくわ串を掬い上げる。素朴な味わいを求めた挙句に注文したのだ。しかし、箸でちくわ串を口に運ぶと、周囲の人々がカップルを作っていたり、ラブレターを書いていたり、怒鳴りつけあっていたり、日常ならば典型的な光景が次々に映像化された。

「えー？ このちくわに夢があったとは……！」

日本郎は見開いた瞳を閉じた。初めてのあの人との出会い、ひどい失恋、仕事中のキッチン事故、子供との会話、数多くの集団の安らぎや怒りや感動が背景に現れた。

そんな中、突然自分自身の断片が現れる。頭の中で読んだ小説の結末、友人との会話、もうすぐ訪れる旅行の計画。すこし不安とわくわくが入り混じった思いで、日本郎は目を開けた。

「また来ます！」日本郎はウサギに笑顔で手を振り、店を出た。店内に流れる悲しげな曲に心が引きずられ、また来ることを約束した。

■この小説のちくわ様自己採点
感動的：7
笑える：1
悲しい：6
夢がある：9
怖さ：0
合計点：23