【寿司嘉 vs. 酢し旬】
江戸時代から続く老舗の寿司店「寿司嘉」には、当地の人々も観光客も足繁く通う。一方、「酢し旬」というお店はまだ新しく、口コミで評判になっているようだ。
主人公の名前は早川和子(はやかわ・かずこ)。「酢し旬」が気になっていた彼女は、ある日、勇気を振り絞って同店に訪れた。
「いらっしゃいませ! 本日のおすすめは、マグロとサーモンの抱き寿司です」
店員さんがにこやかに声をかけてくれる。和子はメニューを眺めながら、店内を見る。カウンターには海老や鮪、いくらが並び、すぐ近くで職人がそれぞれのネタを手早く握っている。
ところが、和子の目に飛び込んできたのは、寿司職人としてはまったくの異色の人物だった。
彼はなんと、ドレッドヘアに眼鏡をかけた男性で、握り方もたやすく寿司を盛り付ける女性職人とは若干異なっていた。手元の動きはどこかゆったりとしているようである。
「あの人がやってる握り、なんだかユルそう……」と和子は一瞬不安になるが、すでに店員さんに「抱き寿司、お願いします」とオーダーしてしまった。
待つことしばし。出てきた抱き寿司を口に運ぶと、むしろ新鮮で食べやすかった。ワインとともに、彼女は至福のひとときを過ごした。
楽しい食事のあと、和子は「酢し旬」の店主に、いろいろと質問をしてみた。職人さんは優秀大学卒の異色の経歴を持つ彼で、和子はひそかに彼のことを応援するようになった。
以来、和子は「寿司嘉」と「酢し旬」を二軒巡るようになった。どちらの店に行くか迷った末、今日も酢し旬に入り込んだ。
すると、従業員同士が大急ぎで黙りこくっている。店主がいないこと、異動が発表された従業員たちがまだ仕事に戸惑っていることなどを口に出していた。
「ま、ガタガタ言うなって! 自分たちでバイキングのアレンジ考えろって。約束だぞ!」
誰かがいった。しかしこのやりとりが微笑ましくも思えなかった。和子は自分がここに来た理由を振り返りながら、店を出る。
そのとき、彼女の目に飛び込んできたのは、寿司嘉の看板だった。
「え? 何かのお祭り?」店主の案内で和子が竹を削って、お鮨の工房見学などに参加し内容いっぱいの時間を過ごした日に、突然、気になっていた「寿司嘉」は閉店していた。
後日、彼女は会社の同僚に胸のうちを話したところ、「寿司嘉」は競合店に買収された、と教えてもらった。酢し旬の店主と職人たちは、早速お祝いに行ったそうだ。
信念を持ってまっすぐ進んだ酢し旬に、明るい未来が待っている。しばらくは和子もその望む道を歩んでみようと思っていた。
■この小説のちくわ様自己採点
感動的:4 笑える:3 悲しい:2 夢がある:9 怖さ:0
合計点:18
江戸時代から続く老舗の寿司店「寿司嘉」には、当地の人々も観光客も足繁く通う。一方、「酢し旬」というお店はまだ新しく、口コミで評判になっているようだ。
主人公の名前は早川和子(はやかわ・かずこ)。「酢し旬」が気になっていた彼女は、ある日、勇気を振り絞って同店に訪れた。
「いらっしゃいませ! 本日のおすすめは、マグロとサーモンの抱き寿司です」
店員さんがにこやかに声をかけてくれる。和子はメニューを眺めながら、店内を見る。カウンターには海老や鮪、いくらが並び、すぐ近くで職人がそれぞれのネタを手早く握っている。
ところが、和子の目に飛び込んできたのは、寿司職人としてはまったくの異色の人物だった。
彼はなんと、ドレッドヘアに眼鏡をかけた男性で、握り方もたやすく寿司を盛り付ける女性職人とは若干異なっていた。手元の動きはどこかゆったりとしているようである。
「あの人がやってる握り、なんだかユルそう……」と和子は一瞬不安になるが、すでに店員さんに「抱き寿司、お願いします」とオーダーしてしまった。
待つことしばし。出てきた抱き寿司を口に運ぶと、むしろ新鮮で食べやすかった。ワインとともに、彼女は至福のひとときを過ごした。
楽しい食事のあと、和子は「酢し旬」の店主に、いろいろと質問をしてみた。職人さんは優秀大学卒の異色の経歴を持つ彼で、和子はひそかに彼のことを応援するようになった。
以来、和子は「寿司嘉」と「酢し旬」を二軒巡るようになった。どちらの店に行くか迷った末、今日も酢し旬に入り込んだ。
すると、従業員同士が大急ぎで黙りこくっている。店主がいないこと、異動が発表された従業員たちがまだ仕事に戸惑っていることなどを口に出していた。
「ま、ガタガタ言うなって! 自分たちでバイキングのアレンジ考えろって。約束だぞ!」
誰かがいった。しかしこのやりとりが微笑ましくも思えなかった。和子は自分がここに来た理由を振り返りながら、店を出る。
そのとき、彼女の目に飛び込んできたのは、寿司嘉の看板だった。
「え? 何かのお祭り?」店主の案内で和子が竹を削って、お鮨の工房見学などに参加し内容いっぱいの時間を過ごした日に、突然、気になっていた「寿司嘉」は閉店していた。
後日、彼女は会社の同僚に胸のうちを話したところ、「寿司嘉」は競合店に買収された、と教えてもらった。酢し旬の店主と職人たちは、早速お祝いに行ったそうだ。
信念を持ってまっすぐ進んだ酢し旬に、明るい未来が待っている。しばらくは和子もその望む道を歩んでみようと思っていた。
■この小説のちくわ様自己採点
感動的:4 笑える:3 悲しい:2 夢がある:9 怖さ:0
合計点:18
「山梨県で人気の寿司店」ランキング! 2位は「寿司嘉」、1位は?【2023年5月版】|ねとらぼ
https://news.yahoo.co.jp/articles/eb3d00a7283f929fb69632f5b2dc26b89dcb4ae5
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