「ツアー発表」というニュースが流れた日、静岡在住の主婦、田中美和子は胸を躍らせた。夫と二人、長年応援しているバンドのコンサートに行くためだ。しかも初の全国ツアーに来ることが決まり、彼女は目を輝かせて周りに伝えた。
ところが夫は、仕事が忙しくて休めないと言いだし、一人での参加を決意する美和子。チケットを手に取って振り返ると、前には黒いシルクハットをかぶった男がいた。名前は付けていなかったが、彼女はその人を「黒帽子」と呼び、少し警戒しながら会話を始めた。
「コンサートに行くの、一人で?そんなにファンなんだ?」
「はい、二人で応援してるんです。夫が休めなくなっちゃって。でも、最近歌詞とかも知ってきて、すっごく楽しみなんです」美和子は語り出すと止まらなかった。そして黒帽子は、優しく「僕も大好きなバンドでね」と微笑んだ。
二人はステージに続く通路を歩きながら話を続ける。黒帽子は音楽プロデューサーだと告白し、美和子に曲作りについて語り始めた。そのキャリアと情熱に感動し、美和子は黒帽子に連絡先を聞き出して交換した。
コンサートの日。美和子は黒帽子と一緒にステージ下で拍手を送った。その時、黒帽子が突然姿を消し、残されたのは手渡されたタッチペンだけだった。中に秘密のメッセージが仕込まれていたのだ。それは彼女一人にしか理解できない音楽の秘密。
美和子は泣きながら、そのまま自分の部屋で音楽を聴いた。一人聞いて、それが本当の音楽なのだと確信した瞬間だった。
「黒帽子は、本当は存在しなかったのかもしれない」と思った美和子は、でも手渡されたタッチペンだけは自分の手の中にある。
(759文字)
■この小説のちくわ様自己採点
感動的:8
笑える:0
悲しい:4
夢がある:10
怖さ:0
合計点:22
ところが夫は、仕事が忙しくて休めないと言いだし、一人での参加を決意する美和子。チケットを手に取って振り返ると、前には黒いシルクハットをかぶった男がいた。名前は付けていなかったが、彼女はその人を「黒帽子」と呼び、少し警戒しながら会話を始めた。
「コンサートに行くの、一人で?そんなにファンなんだ?」
「はい、二人で応援してるんです。夫が休めなくなっちゃって。でも、最近歌詞とかも知ってきて、すっごく楽しみなんです」美和子は語り出すと止まらなかった。そして黒帽子は、優しく「僕も大好きなバンドでね」と微笑んだ。
二人はステージに続く通路を歩きながら話を続ける。黒帽子は音楽プロデューサーだと告白し、美和子に曲作りについて語り始めた。そのキャリアと情熱に感動し、美和子は黒帽子に連絡先を聞き出して交換した。
コンサートの日。美和子は黒帽子と一緒にステージ下で拍手を送った。その時、黒帽子が突然姿を消し、残されたのは手渡されたタッチペンだけだった。中に秘密のメッセージが仕込まれていたのだ。それは彼女一人にしか理解できない音楽の秘密。
美和子は泣きながら、そのまま自分の部屋で音楽を聴いた。一人聞いて、それが本当の音楽なのだと確信した瞬間だった。
「黒帽子は、本当は存在しなかったのかもしれない」と思った美和子は、でも手渡されたタッチペンだけは自分の手の中にある。
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